Matter製品の計画策定:主な検討事項の概要
スマートホームエコシステムは何年も前から存在しており、Amazon、Apple、Googleなどの主要プラットフォームが、世界中で何億人ものユーザにサービスを提供しています。しかし、これらのエコシステムは、これまで孤立したサイロとして運用されてきたため、デバイスやプラットフォーム間の相互運用性が制限されていました。Matter仕様のリリースにより、IoT業界はスマートホームインフラストラクチャの新しいオープンな時代に突入しています。
Matterは、IoTエコシステム全体で共通のデータモデルを提供するために設計されたアプリケーションレイヤープロトコルです。Matterを使用すると、スマートホームデバイス、ゲートウェイ、スマートスピーカーなどが、エコシステムの境界を越えてシームレスに通信できるため、互換性と柔軟性が向上します。
本書は、製品マネージャーや意思決定者向けに、MatterプロトコルとそれがIoTエコシステムに与える影響をわかりやすく解説するものです。Matter製品の立ち上げを計画する際に最も重要な10の検討事項を概説し、そこには、Matterが製品開発と統合をどのように変革するか、主要なデバイスタイプ、認証要件、および製造中の認証管理などが含まれます。このガイドを活用することで、進化するMatterの環境を把握し、リスクや予期しないコストを低減しながら、製品の市場投入までのプロセスを加速化できます。
10個の検討事項 - 一覧
01 Matterのデバイスタイプ
標準か、カスタマイズ?
02 ネイティブMatterか、ブリッジ接続デバイスか
製造をはじめとするさまざまな場面で、Matter証明書を安全に管理するにはどうすべきか?
03 独自のMatterファブリックか、エコシステムか
独自のMatterファブリックを構築すべきか、それともエコシステムに依存すべきか?
04 Matter + エコシステム
なぜMatterをスマートホームエコシステムと統合するのか?
05 Matterとエコシステムスタックの比較
Matterスタックとエコシステム固有APIには、それぞれどのような利点があるのか?
06 ワイヤレス設計
Matterのワイヤレス設計をどのように最適化するか?
07 組み込み開発
3つのアプローチのうち、どれが自社にとって最適か?
08 テストと認定
Matter製品にはどのような認証が必要か?
09 認証管理
製造をはじめとするさまざまな場面で、Matter証明書を安全に管理するにはどうすべきか?
10 ライフサイクルメンテナンス
Matter製品のインストールベースを、ライフサイクル全体にわたり、どのように最新の状態に維持するか?
CSAのメンバーですか?
Matterの製品を製造するすべてのデバイスメーカーは、Connectivity Standards Alliance (CSA) に登録する必要があります。CSAパートナーシップの4つのレベルの詳細については、CSA Webサイトを参照し、オンラインフォームを使って直接登録してください。
01: Matterのデバイスタイプ
どのようなデバイスを構築していますか?
Matterデバイスを設計する際、デバイスタイプは最初に検討すべき最も重要な事項です。Matterプロトコルは、デバイスタイプに基づいて動作します。最新の仕様に含まれ、識別されているデバイスタイプのみがMatterシステム上で機能します。たとえば、Matter 1.1にはLED、スイッチ、電気プラグ、ロック、ブラインド、シェード、ガレージドア・オープナー、サーモスタット、HVAC、ゲートウェイなどのデバイスタイプが含まれます。その他のタイプのデバイスは、まだ Matter 1.1準拠のシステムでは機能しません。
現在のMatterリリースで指定されていないデバイスを構築する予定で、それがロードマップの一部である場合は、CSAに新しいデバイスタイプを仕様に含めるように要請できます。
Silicon Labsは、どのように支援できるのでしょうか?
CSAの主要な貢献企業として、Silicon Labsは、貴社のようなコネクテッドデバイスメーカーの声に積極的に耳を傾けています。当社は、デバイスメーカーや消費者のニーズに基づいて、Matter仕様の進化に影響を与えることができます。Matterコードに新しいデバイスタイプを実装して、実験と検証を行うことができます。
現在、Matter仕様 1.1でサポートされているデバイスタイプ
TV
LED
スイッチ
プラグ
ロック
ブラインド&シェード
センサー
サーモスタット
ゲートウェイ
ポンプ&
コントローラ
02: ネイティブMatterか、ブリッジ接続デバイスか
ネイティブか、ブリッジ接続デバイスか?
デバイスメーカーの観点から見ると、Matterはゲートウェイ不要のプロトコルと考えることができます。Wi-FiシナリオでMatterを使用する場合、ゲートウェイを構築する必要はありません。どのWi-Fiルーターでも、デバイスをMatterネットワークに接続できます。MatterがThread経由で送信される場合は、ボーダールーターが必要です。しかし、この標準機能は、通常、エコシステムプロバイダのインフラストラクチャに含まれます。
Matterブリッジ
Matterブリッジは、802.15.4プロトコルなどの他のプロトコルを使用するデバイスがMatterシステムに接続できるようにする標準機能です。これにより、既存のZigbee、Z-Wave、およびその他の独自デバイスの収益拡大と製品寿命の延長が可能になります。しかし、既存のZigbeeとZ-Waveデバイスを同じMatterシステムにブリッジできるマルチプロトコルゲートウェイの開発は容易でありません。
Matterブリッジ
Matter標準は、Wi-Fi、Thread、Bluetooth LEプロトコルを組み合わせています。Matterブリッジは、他のワイヤレスプロトコルを使用するデバイスをシステムに接続できる標準機能です。
Unify SDK:マルチプロトコルゲートウェイのソリューション
Silicon LabsのUnify SDKは、Matterブリッジなどのゲートウェイ向けのマルチプロトコルソフトウェア開発を画期的に簡素化できます。これにより、Unify SDKがプロトコル固有のコード変換を処理するので、1つのコードベースのみを開発・保守すればよくなります。
Unify SDKの利点
- クローズドエコシステム戦略とオープンエコシステム戦略を組み合わせる - クローズドエコシステムを維持しつつ、Matterを通じて隣接するオープンエコシステムへの展開を開始する
- 既存のZ-Wave および802.15.4デバイスの寿命を延ばす - 既存ユーザの満足度を維持しつつ、Matter領域において継続的に収益を生み出す
- Matterの研究開発費と製品化までの時間を削減する - Unify SDKでゲートウェイ製品のマルチプロトコルソフトウェア開発を簡素化する
Unify SDK
Silicon LabsのUnify SDKは、デバイスメーカーがMatterブリッジをより迅速に構築し、製品化までの時間を短縮できる唯一のマルチプロトコルソフトウェア開発ツールです。
03: 独自のMatterファブリックか、エコシステムか
独自のアプリかエコシステムアプリか?
デバイスメーカーとして、Matterファブリックに関して3つのアプローチから選択できます。
- 独自のMatterデバイスを構築し、スマートホームエコシステムプロバイダがすでに提供しているファブリックを使用する方法。これは最も簡単な選択肢ですが、ブランド展開やユーザ体験のカスタマイズの可能性は制限されます。このオプションは、購入者がMatter対応のスマートスピーカーなどを所有していなければデバイスを操作できないため、販売数の減少につながる可能性もあります。
- Matterデバイスと、既存のエコシステムファブリックと連動する独自の専用アプリを構築する方法。このオプションは、クラウドインフラストラクチャに必要な労力と投資を削減し、オプション1よりも柔軟にユーザ体験をカスタマイズする機会が得られます。
- Matter認定デバイス、モバイルアプリ、クラウドインフラストラクチャ、ボーダールーターなどのローカルMatterコントローラーデバイスを含む、完全なMatterファブリックを構築する方法。独自のMatterファブリックは、エコシステムプロバイダのファブリックと連携して動作させることができます。3番目のオプションは、これら3つの選択肢の中で最大の投資を必要としますが、最もカスタマイズされブランド化されたスマートホームユーザ体験を構築できます。
04: Matter + エコシステム
Matter製品をスマートホームエコシステムに接続する必要があるか?
Matterは、スマートホーム製品があらゆるスマートホームエコシステムブランドと互換性を持てるようにします。Matterだけでは、デバイスメーカーにその可能性を十分に提供することはできません。スマートホームエコシステムでMatter 製品を認証し、マーケティングで公式のWorks Withバッジを使用すると、いくつかの利点が得られます。
Matter + スマートホームエコシステムの利点
- 1つのSKUで世界最大のスマートホーム市場に参入し、売上と製品利益率を向上させます。
- 消費者が、すでに自宅にあるデバイスと確実に連携できると分かった上で、安心して製品を購入できるようになります。
- 世界中の何百万人ものユーザに馴染みのある信頼できるエコシステムのユーザ体験とインターフェイス (UX/UI) を活用して、製品の市場導入を加速化できます。
- 特定のエコシステムに固有の追加機能を開発することで差別化を図れます。
- 開発プラットフォームとツールにより、研究開発コストと収益創出までの時間を短縮できます。
- ゲートウェイ、ボーダー、クラウド、アプリなど、独自のファブリックを構築する必要はなく、さまざまなエコシステムプロバイダのゲートウェイは、すでに数億世帯に存在しています。
- 既存のZ-Wave、Zigbee、および独自のデバイスをMatterにブリッジして、収益創出機会を拡大できます。
05: Matter + エコシステムスタック
Matterとエコシステムスタックの比較
Matter標準では、すべての Matter対応IoTエコシステムと互換性のある統合データモデル (DM) が導入されており、これによりエコシステムごとに必要だった大規模な開発作業が不要になります。
複数のエコシステム固有のアプリケーションプログラミングインターフェース (API) を実装する代わりに、デバイスメーカーは、すべてのエコシステムに対応する単一の標準的なMatterデータモデルを実装するだけでよくなります。Matterでは、各エコシステムで簡単な相互運用性テストと認証プロセスのみを実行するだけですみます。デバイスメーカーにとっての利点は、ソフトウェア開発の簡素化と相互運用性テストと認証作業の削減、コストの節約、そして収益創出までの時間の短縮です。
IoTエコシステム認証
設計、開発、テスト、認証のプロセスは、IoTエコシステムによって異なります。さまざまなIoTエコシステムの利用開始方法について、詳しくご覧ください。
06: ワイヤレス設計
Matterに最適なワイヤレスプロトコルを選択する
どの家庭も、ワイヤレスに関する特有の課題を抱えています。壁、反射、干渉によってユーザ体験が損なわれる可能性があります。接続されたデバイスの品質は、接続性の品質次第です。では、どうすればユーザに最高の第一印象を与えることができるのでしょうか?Matterでは、検討すべき3つのワイヤレスプロトコルがあります。すなわち、データ通信用のWi-FiとThread、簡単なデバイスのコミッショニング用のBluetooth Low Energyです。Silicon Labsは、すべてのMatterプロトコルに対して、最も電力効率の高いシングルチップソリューションで最高のワイヤレス性能を提供します。これにより、設計の複雑さ、実装面積、BoM(部品表)が削減されると同時に、デバイスで、家のすべての部屋やその先でも、信頼性の高いワイヤレス接続を実現できるようになります。
SoCかモジュールか?
Silicon Labsのワイヤレスハードウェアは、アンテナ内蔵の超小型SoCおよび RF 認定モジュールとして利用できます。
SoC
設計上、究極の柔軟性を得るには、SoCを選択してください。
モジュール
モジュールを選択すると、テストと認証のコストを削減できると同時に、収益創出までの時間を短縮できます。
07: 組み込み開発
あなたのチームに適した開発アプローチは何か?
Matter組み込みソフトウェア開発では、開発組織に応じて、3つのアプローチから選択でき、それぞれのアプローチには長所と短所があります。
Silicon Labs GSDK
Gecko Software Development Kit (GSDK) を備えたSilicon LabsのSimplicity Studioは、開発チームに、Matterで最も簡単でスムーズ、かつ統合された開発体験を提供します。これには、スマートホームエコシステム認証へのシームレスな移行が可能なプロトコルSDKとMatter SDKがすべて含まれています。最先端のワイヤレススペシャリストツールキットには、エネルギープロファイラー、ネットワークアナライザー、ピンツールなどが含まれ、追加費用なしで利用できます。アプリケーション例を使用すると、開発作業をすぐ開始するまでの時間を節約できます。Simplicity Studioに含まれるテストハーネスと認証機能により、収益創出までの時間が短縮されます。
Silicon Labs Matter GitHub
Silicon Labs Matter GitHubを通じて、テストおよび検証済みのMatterソフトウェアにアクセスできます。このソフトウェアは、Silicon Labsのハードウェアで最高のパフォーマンスを提供し、デバッグとトラブルシューティングに必要な時間を短縮するために最適化されています。これにより、製品全体の品質が向上し、開発が加速されます。Silicon Labs Matter GitHubは、独自のツールとプロセスを持つ開発者やチームに最適です。
Unify SDK
Unify SDK は、Matterブリッジおよびゲートウェイ向けに簡素化されたマルチプロトコル(Zigbee、Z-Wave)ソフトウェア開発を実現します。これにより、開発コストと製品化までの時間が短縮されます。単一のコードベースを開発・保守するだけで済み、Unify SDKがプロトコル固有のコード変換を処理します。
08: テストおよび認証
3つのすべての認証レベルを管理する方法は?
Matter認証
Silicon LabsのMatterソリューションは、すでにCSA認証を取得しているため、製品開発と認証作業が簡素化されます。ただし、最終製品はこの認証を受け継ぐことはなく、CSAに提出されるBluetoothおよびWi-Fi認証IDを含む文書とともに、認定テスト機関でCSAの指示に従ってテストする必要があります。Wi-Fi認定ロゴを最終製品に使用しない場合は、Silicon LabsのWi-Fi認定IDを使用できます。
ネットワークスタック認証
Silicon Labsのワイヤレスネットワークスタックは、開発時間とコストを節約するために、それぞれの標準化団体によって認定されています。Simplicity Studioは、チームのテストと認証を合理化します。
- Silicon LabsのBluetooth Low Energyスタックは、Bluetooth SIGで認定されています。この認証は最終製品に受け継がれます。追加のテストは必要ありません。ただし、Bluetooth SIGに認証文書を提出する必要があります。
- Silicon LabsのThreadスタックも認定されており、この認証は最終製品に受け継がれます。追加のテストは必要ありません。ただし、Thread Groupに認証文書を提出する必要があります。
- 最終製品でWi-Fi認定ロゴを使用する場合、Wi-Fi Alliance認定が必須です。Silicon LabsのWi-FiソリューションはWi-Fi Allianceによってテストおよび認定されているため、認証プロセスが容易になります。製品でWi-Fi認定ロゴを使用しない場合、認証は必須ではありません。
エコシステム認証
メーカーが公式のWorks Withバッジを使用する権利を主張するには、スマートホームエコシステムとの相互運用性テストと認証が必要です。Silicon Labsの実装は、一般的なIoTエコシステムでテストされており、認証プロセスは、当社のドキュメント、ガイド、ツールに説明されています。これにより、デバイスを認証する際の時間とコストを節約し、どこでも機能するMatter製品を簡単に構築できるようにします。
09: 証明書管理
Matter証明書を管理する方法は?
デバイスメーカーにとって最も重要な課題の1つは、アウトソーシングされた製造プロセス中にMatter証明書を安全に管理し、IPの盗難や偽造の脅威を防ぎつつ、コスト効率の高いプロセスを実現し、委託メーカーからの独立性を維持することです。
Silicon Labsは、デバイスメーカーにMatter証明書のカスタムインジェクションを提供しています。これは、製造プロセス中にMatter証明書をSilicon LabsのワイヤレスSoCに安全に書き込めることを意味します。これにより、製造の複雑さが軽減されると同時に、製品ライフサイクルの最初からMatter証明書をより安全に管理できるようになります。また、独立性も高まり、証明書を安全に管理しながら、いつでも生産拠点を移転できます。Silicon Labs Custom Part Manufacturing Serviceを活用することで、高度なセキュリティと独自の証明書を備えたワイヤレスハードウェアとMCUのカスタマイズを実現できます。
10: ライフサイクルメンテナンス
インストール済みの製品群を維持する方法は?
スマートホームデバイスの寿命は、用途によっては数年にわたる場合があります。とはいえ、デバイスのライフサイクル全体にわたってインストール済みの製品群を効率的に維持しながら、ユーザに毎日優れた体験を提供するという約束を守らなければなりません。これには、ソフトウェアバージョンの維持やセキュリティの頻繁な更新が含まれ、これにより、インストール済み製品群が急速に進化するサイバー脅威への耐性を高め、ユーザのプライベートデータを保護します。
SDK拡張メンテナンスサービス(SEMS)
Silicon Labsは、SDK Extended Maintenance Serviceにより、デバイスメーカーに対し最大10年分のソフトウェアおよびセキュリティアップデートを提供することで、最高の製品寿命を実現します。
