IC とモジュール:IoTアプリケーションの技術的なトレードオフを理解する
IoT が業界を変革し続ける中、ワイヤレス接続コンポーネントに関する設計決定はますます複雑化しています。エンジニアは、IoT アプリケーション用にICとワイヤレス・モジュールのいずれかを選択すべきかというジレンマにしばしば直面します。どちらのオプションにも独自のメリットとトレードオフがあり、設計の複雑さ、コスト、スケーラビリティ、製品化までの時間などの要因に影響を与えます。このブログでは、それぞれに関連する技術的な検討事項と課題について考察し、ワイヤレス・ソリューションに関する Silicon Labs の専門知識から洞察を得ます。ICとモジュール間の技術的な比較を行い、各アプローチに関連する主な違い、利点、隠れたコストを明らかにします。
IC とモジュールを理解する
IC(SoC)は、プロセッサ、メモリ、およびその他の機能要素をシングルチップに含む半導体デバイスです。IC を使用して設計するエンジニアは、アンテナ設計、RF マッチング、電源管理、およびその他のコンポーネントを含むサポートPCBを開発する必要があります。
一方モジュールは、RF ピン/内蔵アンテナ、EMC シールド、電源フィルタリング、RF マッチング・コンポーネント、アンテナ・コンポーネント、および世界的な規制認証など、必要なすべてのサポート・コンポーネントともにICを含む事前統合システムです。モジュールは、完全なソリューションの実装に必要なハードウェア環境を最小限に抑え、設計の複雑さと認証作業を削減するように設計されています。
ICおよびモジュールの設計および開発に関する検討事項
設計の複雑さ
- IC:RFエンジニアは、アンテナのレイアウト、PCBトレースの長さ、およびマッチングネットワークを綿密に設計し最適化する必要があります。レイアウトのわずかな変化でも信号性能が低下し、大規模なデバッグが必要になりかねません。
- モジュール:事前に最適化された RF 設計により、複雑なアンテナ配置とマッチングが不要になり、開発時間と労力が削減されます。
認証とコンプライアンス
- IC:SoCを使用する製品には、ターゲット市場ごとに個別の規制当局(FCC、CEなど)の承認が必要であり、コストと時間がかかる場合があります。
- モジュール:モジュールは事前に認証された規制承認を伴うため、認証コストとリスクが大幅に削減されます。
製品化までの時間
- IC:RF設計と認証の複雑さにより、製品の発売が3~6か月遅れる可能性があります。
- モジュール:開発サイクルの短縮により市場参入の迅速化が可能になり、それは、競争の激しい業界において重要な利点となります。
コスト分析
- IC:初期コンポーネントコストは低くなりますが、設計および認証コストは高くなります。。規模の経済が投資を正当化する大規模な生産に適しています。
- モジュール:ユニット当たりのコストは高い一方、設計・開発コストは減少します。低~中生産量に最適。
IC設計の隠れたコスト
Silicon Labs のホワイトペーパー、「Six Hidden Costs in a Wireless SoC Design」で明記されているように、SoC で設計すると、しばしば見落とされる隠れたコストが発生します。
- RFの専門知識:専門の RF エンジニアの採用には、年間100,000ドルから 200,000ドルの費用がかかります。
- ラボ用機器:スペクトラムアナライザ、無響室、その他の RF テスト機器には、最大 50,000ドルのコストがかかります。
- PCBレイアウト:アンテナの最適なパフォーマンスを達成するには、反復的なPCB設計と製造サイクルが必要です。
- 認証料金:SoCの規制テストは、5年間で50,000ドルを超える可能性があります。
SiP(System-in-Package)とPCBモジュールの比較
ICとモジュールを検討する際、もう1つの要因となるのは、使用するフォーム・ファクタです。
SiP モジュール
システム・イン・パッケージ (SiP) モジュールは、複数のコンポーネントを1つのパッケージに統合し、小型 (<12mm x 12mm)、事前統合コンポーネント、高度なパッケージング技術 (スタックメモリなど)を使用し、高性能アプリケーション向けに最適化されていますが、熱および機械的な設計には細心の注意が必要です。
PCB モジュール
PCBモジュールは、コンポーネントが個別に取り付けられたキャリアボードで構成されています。開発と社内プロトタイピングが容易で、設計変更が柔軟で、2番目のソーシングが容易で、一般的にサイズが大きくなります (>10mm x 10mm)。
小型 IoT 設計用 SiP モジュール
BGM220Sなど Silicon Labs のシステム・イン・パッケージ(SiP)モジュールは、モジュールベースの設計の利点を実証しています。これらのモジュールは、統合されたRFコンポーネントとシールドを特徴としており、ウェアラブルやスマート・センサーなどのスペースに制約のあるアプリケーション向けに優れたサイズとパフォーマンスの最適化を提供します。コンパクトな 6.5 mm x 6.5 mm フットプリントの SiP モジュールは、堅牢なRFパフォーマンスを確保しながら PCB の面積を削減します。
ICとモジュールのいずれかを選択すべき場合
ICは、以下の場合に理想的です。
- 大量生産は、設計と認証の先行コストを正当化できる場合。
- 設計チームが、RFの専門知識と高度なラボ施設にアクセスできる場合。
- カスタムRFの最適化が、アプリケーションにとって重要な場合。
モジュールが望ましいのは、以下の場合です。
- 製品化までの時間の短縮が不可欠な場合。
- 規制認証コストの最小化が必要な場合。
- アプリケーショに、コンパクトで標準化された設計が必要な場合。
バランスの取れたアプローチ
ICとモジュールのいずれにするかの決定は、プロジェクト固有の要件、リソース、およびビジネス目標によって異なります。Silicon Labsは両方のソリューションを提供できるため、お客様は生産量と設計能力の変化に合わせてモジュールから SoC にシームレスに移行できます。単一のサプライヤーと提携することで、企業はソフトウェア投資を保護し、IoT設計を最適化して長期的な成功を実現できます。