30 年にわたるイノベーションと今後の展望
Silicon Labs は、困難な課題を解決したいという意欲、そして有名なコイン投げからスタートしました。
Nav Sooch、Dave Welland、Jeff Scottの3人は、このコイン投げをきっかけに会社を設立することを決断しました。しかし、その後の歩みは決して偶然によるものではありません。1996年当時、彼らは、優れたエンジニアリングチームが複雑なシステムを見直し、より多くの機能をシリコンに統合することで、高度な技術を顧客にとってよりシンプルで使いやすいものにできると確信していました。
30年を経た今も、その信念はSilicon Labsの中核となっています。テクノロジーは、モデムやミックスドシグナル・デバイスから、セキュアでインテリジェントなワイヤレス接続へと進化しましたが、その根底にある考え方は変わっていません。すなわち、困難な課題に取り組み、世界が次に必要とするものを作り上げるという発想です。
1996 ~ 2000: 困難な設計を、商業的ブレークスルーへと転換する
Silicon Labs の最初の大きなチャンスは、モデムを電話回線に接続する回路である DAA 技術、つまりダイレクト・アクセス・アレンジメントから生まれました。当時、この機能を実現するには、通常、変圧器、リレー、光アイソレータなど、大型のディスクリート部品を多数組み合わせる必要がありました。
1998年に導入された Silicon Labs の DAA は、そのハードウェアの大部分を回路基板上の専有スペースの約5分の1に抑えた、集積型シリコン・ソリューションへと進化させました。この設計により、コストと複雑さが軽減され、世界共通の単一モデム設計が可能になると共に、ノートパソコンなどの小型製品にもモデム接続を実用的に搭載できるようになりました。
もう一つの初期のブレークスルーは、携帯電話用のCMOSベースの無線周波数シンセサイザーでした。これら最初の二つのIC設計は「以前は集積化が困難、あるいは非現実的だと考えられていた機能も、シリコン上で実現できる」という、創業者たちの核心的な主張を実証するものでした。
これらの初期の成功を受け、Austin Ventures は1997 年3月、Silicon Labs に対する500万ドルのシリーズA資金調達を決定しました。わずか2年で、Silicon Labs は利益を上げました。その後、創業から4年足らずの2000年3月、会社はNasdaq市場で新規株式公開を果たし、ティッカーシンボル「SLAB」で上場しました。IPOによって約1億ドルを調達しました。すでに達成していた事業規模に比べて非常に少ないベンチャー資金でこれだけの資金調達を実現したことは、業界でも高く評価されました。
これらの形成期は、創業者のエンジニアリング中心のビジネスモデルが、大規模なグローバル市場で商業的に大きな成功を収める製品を生み出せることを実証しました。
2000-2012: 接続型の世界と共に進化する
通信技術の進化に伴い、Silicon Labs も進化しました。
会社は、当初のモデムおよび携帯通信製品から、マイクロコントローラ、ラジオおよびテレビ用チューナー、タイミング、絶縁、センサー、自動車技術、ワイヤレス接続へと事業領域を拡大しました。どの事業展開においても、設計の簡素化、低消費電力化、部品点数の削減、そして開発者がより高度な製品を構築できる統合型テクノロジーの提供という、共通した基本理念が貫かれていました。
2003年にオースティンを拠点とする Cygnal Integrated Products を買収することで、Silicon Labs は、高度に集積化されたアナログ機能重視の8ビット・マイクロコントローラの幅広い市場に参入しました。Cygnalの買収により、Silicon Labsは50を超える汎用製品のポートフォリオを実現し、アプリケーション専用の通信チップにとどまらず、組み込みコンピューティング分野における重要な基盤を築きました。
同社は、オースティンのダウンタウンに恒久的な拠点を構える必要があるほどの急成長を遂げていました。2006年、Silicon Labs はオースティンの象徴であるレディバード湖を見下ろす本社に移転しました。この移転により、Silicon Labsは創業の地において存在感のある拠点を確保し、より広範な技術的なミッションを追求するための基盤を築きました。
さらにSilicon Labs は、ラジオやテレビのチューナーを、従来の機械式やモジュール型の設計から移行させることにも貢献しました。2012年、会社は、シリコン製テレビチューナーの累計出荷数が1億個に達したことを発表しました。Silicon Labs は、自社の TV チューナは事実上すべての大手テレビメーカーに採用され、受信性能と画質を向上させると共に、システムのコストと複雑さを軽減したと述べています。
この間、Silicon Labs のコンポーネントは、コンピューターや携帯型メディア・プレーヤーからテレビ、車載システム、ホーム・エンターテインメント製品、さらには初期世代のコネクテッド・ホーム・デバイスまで、急速に多様化する民生電子機器の分野を幅広くサポートしました。
2012 ~ 2020: IoT を支えるプラットフォームを構築する
2012年のEmber買収は、この進化における大きな一歩となりました。Ember は、Zigbee 技術と、低消費電力ワイヤレス・メッシュネットワーキングにおける豊富な経験をもたらしました。その技術はすでに2,500万台以上のデバイスに搭載されており、スマートエネルギー、コネクテッドホーム、セキュリティ、照明、産業アプリケーションで使用されています。
3年後、Silicon Labs は Bluegiga を買収し、Bluetooth および Wi-Fi モジュール、プロトコル・スタック、ソフトウェア、開発ツールを追加しました。Silicon Labs はその後、超低消費電力 Gecko マイクロコントローラ技術を Bluetooth 接続、モジュール、SoC、開発キット、ソフトウェアと組み合わせた Blue Gecko ポートフォリオを導入しました。
コネクティビティは、家庭、工場、ヘルスケア製品、エネルギー・システム、都市、工具、家電、インフラへと広がっていきました。電池寿命、セキュリティ、相互運用性、プロトコルのサポート、開発の簡素化は、無線性能と同様に重要になってきました。会社は、こうしたニーズに応えるための体制を整えていました。
2016 年の創業20 周年までに、Silicon Labs は、70億以上のデバイスを出荷し、1,500件以上の特許を取得し、世界中で約 1,200人の従業員を抱えるまでに成長しました。
2020年に導入された BG22 Bluetooth Low Energy SoC は、この新しい市場が求める規模と専門性の高さを示す重要な例となりました。Silicon Labs は、低消費電力 Arm CortexM33- プロセッサと低送受信電力を組み合わせ、特に大量生産されるバッテリー駆動のBluetooth製品向けにBG22を設計しこのプラットフォームは、資産タグ、ビーコン、携帯型医療機器、コネクテッドホーム製品、産業用センサーなどのアプリケーションをサポートすることを目的としており、一部のコイン型電池を使用した設計では、5年以上の電池寿命を可能にしました。
Silicon Labs の役割は、業界エコシステム全体にも広がっていました。ポートフォリオは、Amazon Sidewalk、Bluetooth、Matter、Thread、Wi-Fi、Wi-SUN、Zigbee、Z-Wave、独自規格ワイヤレス、その他のテクノロジーにまで及びます。会社は、規格の開発、認証の取り組み、ソフトウェアの実装、およびコネクテッド製品の相互運用性を高め、導入を容易にすることを目的としたパートナーシップの実現に貢献しました。
2020-2025: セキュアでインテリジェントなワイヤレスですべてを実現する
2021年、Silicon Labs は、Skyworks Solutions にインフラストラクチャーおよび自動車事業を売却するという重大な決断をしました。この取引には、タイミング、電力、絶縁、自動車、放送製品、関連する知的財産および従業員が含まれていました。この売却により、Silicon Labs は IoT 向けの安全でインテリジェントなワイヤレス接続に特化した企業への転換を遂げました。
2022年には、ハイデラバードの新しいオフィスを正式に開設し、これがイノベーションのグローバルセンターとなりました。この拡張は、ハイデラバードが世界的なIoTイノベーションの拠点として果たす役割が高まっていることを示すと共に、Silicon Labs と国際情報技術研究所 - Hyderabad (IIIT- H) の Smart City Living Lab とのパートナーシップの始まりを示すものでもありました。
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こうした大胆な選択をする姿勢が、Silicon Labsを、セキュアでインテリジェントなワイヤレス・コネクティビティに特化した世界的リーダー企業へと変革する原動力となりました。そして今、その姿勢は、Texas Instrumentsと共に歩むSilicon Labsの次のステージに反映されています。
2月、Texas Instruments と Silicon Labs は、TIがSilicon Labsを買収することで最終合意に達したと発表しました。これにより、Silicon Labs の組み込みワイヤレス・ポートフォリオと、TI のアナログおよび組み込みプロセッシング製品、製造能力、市場リーチ、事業規模が統合されます。両社は双方の力を結集し、イノベーションを加速するとともに、拡大を続けるさまざまな用途に組み込みワイヤレス・コネクティビティを広く提供していきます。
3人のミックスドシグナル・エンジニアが、週末のブレインストーミングや長いランチを重ねながら自分たちの未来について語り合っていた頃から、実に多くの変化がありました。モデムはスマートフォンへ、個々のワイヤレス接続はマルチプロトコル・エコシステムへと進化し、接続型デバイスの利用範囲は、民生電子機器から、建物、工場、都市、ヘルスケア、エネルギーシステム、さらには社会インフラへと拡大しました。インテリジェンスは、クラウドからエッジへと移行し始めました。そして今や、誰も25セント硬貨を持ち歩かなくなりました。
しかし、Silicon Labsの根底にある考え方は、驚くほど一貫しています。常に、困難なエンジニアリング上の課題に取り組み、システムの構築方法を再考し、顧客が使用できるよう複雑な技術をよりシンプルにすることを目指してきました。
あのコイン投げから30年後、その事業機会は、創業者たちの想像をはるかに超える規模へと成長しています。コネクテッドインテリジェンスは、家庭、工場、都市、医療、エネルギーシステム、重要インフラへと拡大しつつあります。テクノロジーは変化し続けますが、Silicon Labsのアプローチは変わりません。それは、困難なエンジニアリングの課題を解決し、複雑さを解消して顧客の負担を軽減し、次なるイノベーションの実現を支援することです。
後に創業者であるNav Soochは、もしコイン投げで「裏」が出ていたらどうなっていたかについて、「おそらく、3回勝負の2回目を行っていたでしょう」と述べています。
