IoT Hero がワイヤレス・ネットワークを作成し、コウモリを研究
私たちは最近、新しい、型にはまらない動物追跡研究を使用している、2人の著者、オハイオ州立大学の進化、生態学、微生物生物学部の生物学者 Simon Ripperger と、ドイツのフリードリヒ・アレクサンダー大学 Erlangen-Nuremberg(FAU)の電子工学研究所のエンジニア Niklas Duda と話す機会がありました。才能あるデュオの動物追跡研究は、10 月に広まりました。新しい研究の 1 つで、野生の吸血コウモリは病気になると自分たちでソーシャル・ディスタンスを保っていることが確認されました。
このソーシャル・ディスタンスの研究は、2019 年以来発表されたいくつかの連続したケーススタディの1つであり、野生のコウモリを追跡および研究するために設計された、この種の初のワイヤレス・バイオログ・ネットワークを詳述しました。新しいバイオログ技術により、同時直接近接検知、高解像度トラッキング、長距離リモートデータのダウンロードが可能になり、チームは野生のコウモリに関する未知のデータや観察情報を収集できるようになりました。このワイヤレス・センサー・ネットワークは、コウモリの社会的性質に関する調査結果を得ることができただけでなく、感染症、野生生物資源、鍛錬戦略、生理学の普及に関する科学的知識の新しい領域への扉を開きました。この2人の優れた科学者が、彼らの研究がどのように始まったか、またいかに新しい技術が科学者や動物保護の専門家が動物バイオログの限界を打ち破ることを可能にしたかについて説明します。
タグ付けされた吸血コウモリ(Desmodus rotundus)
写真クレジット:Sherri & Brock Fenton
協業を始めた経緯と、コウモリ研究の背景をお聞かせください。
Simon:私は 2013 年末からこのプロジェクトに携わっており、コウモリ生物学者でもある私のアドバイザーから影響を受けました。彼は以前からギリシャでフィールドワークを行っていましたが、彼らのコウモリの追跡とバイオログの方法は信じがたいものでした。基本的に、彼はコウモリの後ろから走り、アンテナで追いかけていました。より良い方法が必要であることはわかっており、大学にはコンピュータ科学者、エンジニア、生物学者の間で長年の協力関係がありました。彼らは、コウモリ用の完全自動追跡システムを使用して、ワイヤレス・センサー・ネットワークで大規模な共同プロジェクトを作成することにしました。
コウモリは捕らえどころがないので、まず手始めに最適な種です。 観察するのが困難です。夜行性で小さいのです。このプロジェクトがコウモリで成功すれば、おそらくほとんどの種でうまくいくでしょう。これは、ドイツ研究財団(DFG - Deutsche Forschungsgemeinschaft)が資金提供した研究ユニットにとってのモチベーションとなりました。
ワイヤレス・センサー・ネットワークについて、またどのように情報を収集するかについて、詳しく教えてください。
Simon:これはバイオログ用の最も高度なセンサー・ネットワークと言えます。さまざまな機能を統合しているため、自動化とデータ品質の度合いについては確かにユニークです。私たちは、タグ付けされた動物をスモールスケールで追跡できる高解像度トラッキングを持っており、近接検知も行っています。このタグは、ハウジングと電池を含めて 1グラム程度に軽量化することができます。GPS追跡用のシステムを見てみると、リモート・ダウンロード機能には数グラムを要し、これは、エネルギーの面で非常に高価となります。これらすべてがタグにかなりの重みを加えるため、この1グラムタグにリモートでデータを取得するオプションがあることは驚くべきことです。
生物学者としての私にとって、最もエキサイティングな機能は近接トラッキングです。タグは相互にやり取りし、情報交換をします。そうすることで、動物グループ全体のソーシャルネットワークを数秒ごとに取得できます。動物でのソーシャルネットワークを研究していると驚かされますが、データ量も驚くべき量になります。
ワイヤレス・ネットワークに Silicon Labs を選択した理由は何ですか?
Niklas:2017 年以来、Silicon Labs EFR32 SoC をすべての試験で使用しています。タグには、2 つの異なる周波数レベルで動作する近接ロギングとローカリゼーション機能があります。Silicon Labs を使用する前は、これらの機能に対応するために 3 つの独立した IC を使用しなければなりませんでした。ただし、Silicon Labs の Flex Gecko は、周波数とマイクロプロセッサ・コアの両方のトランシーバを 1 つのコンポーネントに統合しています。3つのコンポーネントから 1 つにスケーリングできるので、PCB は小型化し、無線の制御が容易になり、全体的なパフォーマンスが向上します。また、Silicon Labs の超低消費電力の機能の Silicon Labs Geckoソリューションも採用したいと考えていました。動物にタグ付けをする場合、当社のソリューションはできるだけ小さく、軽く、低消費電力である必要があります。Silicon Labs のソリューションはこのニーズに対応します。
この技術を用いて、あなたの研究でコウモリについて学んだことについて、詳しく教えていただけますか?
Simon:私たちが最初に実施した研究は、結節性コウモリに関するものでした。市内の公園に住むヨーロッパのウモリです。コウモリは数日ごとに就塒場所を替えます。そこで、私たちは、絶え間なく変化する就塒場所がどこにあるのかを、コウモリの子供たちはどのようにしてわかるのかを知りたいと考えました。今まで、これは追跡することが不可能でした。私たちのワイヤレス・ネットワークを用いて、母親が実際に新しい就塒場所に子を誘導し、就塒場所を離れて、一緒に飛び、新しい就塒場所に到着することを発見しました。私たちの近接検知のこの最初のシンプルなアプリケーションによって、コウモリの母性ケアの全く新しい形態を発見しました。
私たちは次に、最も社会的な種である、吸血コウモリの研究へと移りました。吸血コウモリは、お互いに認識し合い、グループ内の特定の個体と付き合い、互いにグルーミングをおこないます。さらには食べ物を共有することを好み、人間の友情と類似した社会的つながりを持っています。野生のコウモリを観察するのは非常に難しいため、この行動は主にオリの中で研究されてきました。私たちは近接センサーを使用して、これらの社会的行動が単なるオリの中で行われる不自然な結果なのか、または野生でもおこなわれているのかを調べることができました。私たちは、社会的関係があることが分かっているコウモリを飼育し、2年後に野生に戻しました。私たちは、自然の生息地におけるすべてのコウモリの関係を追跡し、こうした社会的関係が、新しいコウモリとの交流やまったく異なる環境においても、野生で維持されていることを明らかにすることができました。これらの関係は非常に安定しており、野生でも持続することが初めて示されました。この技術がなければ、これらの行動を観察することは到底できませんでした。
あなたの研究の1つは、この秋、国際メディアで広く取り上げられました。どのような発見だったのかについて教えていただけますか?
Simon:私たちはワイヤレス・ネットワークを使って、コウモリのソーシャル・ネットワークと、コウモリが病気になったときにそれがどのように影響するかについて観察しました。そのグループの半分に免疫に対抗する物質を与えました。これは、実際には病気になるのではなく、免疫系を反応させる物質です。私たちが得た高い解像度のデータにより、コウモリが病気になったときにネットワークに何が起こるかを観察することができました。コウモリの社会的交わりは減少しました。これは、まさにソーシャルディスタンスと呼ばれるものです。そして病気が快復すると、「病気だった」コウモリとの接触レベルは正常に戻ります。基本的に、コウモリは気分が悪くなったら、自身をグループから距離を置くように管理していることがわかりました。
今後の研究計画はどのようなものですか?
Niklas:私たちは、この技術を他の動物でも使用するために、Dulog という会社を立ち上げました。この技術は複数のパイロット顧客と共同開発中で、今年後半に市販される予定です。
Simon:感染症の蔓延の防止から、食糧資源や交配行動に関する社会的動物間の情報の流れの研究に至るまで、このアプリケーションには終わりはありません。空は無限です!なぜ社会性動物は、そのように行動するのでしょうか?当社の技術を使うことで、邪魔されることなく自然な行動を観察することができるようになりましたが、これは野生の実験的アプローチに動物がどのように反応するかを見るためにも使うことができます。
今後 5~ 8 年で IoT はどこに向かっていくと思いますか?
Niklas:IoT が発展するにつれ、センサーは小型化し、科学界に大きなメリットをもたらします。私たちは、より大きな商業市場が推進する IoT のメリットを享受しています。
Simon:生物学では、飛躍は常にテクノロジーよってインスパイアされてきました。動物の追跡は 50 ~ 60 年前から行われていますが、IoT の進歩によってこのような最近の開発が可能になり、バイオログと動物の追跡での真のルネッサンスを生み出しています。超低消費電力のコンピューティングのメリットを、生物学研究のさまざまな側面で活用できます。これは、より良いデータが得られるだけでなく、かなり幅広い動物種でこれを活用することができます。
当社の EFR32 テクノロジーの詳細については、https://www.silabs.com/products/wireless/technology をご覧ください。