IoT の新しい時代で Wi-Fi 6 のパワーを活用する
IoT分野の技術的進歩に伴い、接続デバイスの種類は急増しています。今日、ワイヤレスデバイスメーカーは、需要を管理し、関係性のルールを設定する役割を担っています。電池寿命やデバイスセキュリティなどの分野での業界主導の取り組みは、将来的にテクノロジーの採用に影響を与えることになります。
802.11ax(Wi-Fi 6としても知られる)は、IoTインフラの中核要素として高まるWi-Fiの重要性を支えるために設計された最新規格です。一部の開発者はすでにWi-Fi 6認証を取得しているため、ほとんどのデバイスは2025年または2026年までにWi-Fi 6に対応するようになります。ウェアラブルやスマートスピーカー以外にも、より多くの世帯がコネクテッドドアベル、サーモスタット、アラームなどを設置することを選択しています。特定のアクセスポイントと通信しようとするデバイスの数は増える一方で、消費者はパフォーマンスに対する高い期待を維持しています。彼らは「一度設定したら放っておける」ようにした上で、それでも安心していたいと思っています。
このホワイトペーパーでは、過去20年間のWi-Fiの急速な進化を取り上げ、IoTデバイス向けのWi-Fi 6の価値について詳しく説明します。
取り上げるトピック:
- Wi-Fi 6リリース の新機能 – 最新のバージョンには、スループットの向上、ネットワーク効率の向上、電池寿命の延長など、特に過飽和ネットワークにおけるさまざまなアップデートが含まれます。
- Wi-Fi 6がIoTデバイスとデバイス開発をどのようにサポートするか – Wi-Fi 6は、IoTデバイスの普及を支援する上で独自の強みを持っており、Silicon Labsはその利点を活かして、超低消費電力かつ高性能な自社チップなど、SiWx917に反映させています。
はじめに
平均的な世帯はかつてないほど多くのIoTデバイスを保有しており、ワイヤレスデバイスメーカーは、高まる需要に対応しつつ、新興技術における関係性のルールを定める役割を担っています。電池寿命やデバイスセキュリティなどの分野における取り組みは、現在および将来長くにわたり、テクノロジーの採用に影響を与えることになります。技術の急速な進歩により、接続されたデバイスやアプリケーション環境の多様性はあらゆる方向に爆発的に拡大しています。
802.11ax(Wi-Fi6 としても知られる)は、今日のインフラストラクチャの中核要素として高まるWi-Fiの重要性を支えるために設計された最新規格です。そのリリースには、特に過密状態のネットワークにおいて、スループットの向上、ネットワーク効率の改善、そして電池寿命の延長を実現するさまざまな機能が含まれています。このペーパーでは、過去20年間のWi-Fiの急速な進化を取り上げ、IoTデバイス向けのWi-Fi 6の価値について詳しく説明します。
Wi-Fi技術の進化と今日の導入状況
Wi-Fiは、最初のバージョンである802.11b以降、驚異的な進歩を遂げてきました。802.11bは1999年に、無線ローカルエリアネットワーク (WLAN) 技術を標準化するInstitute of Electrical and Electronics Engineers(IEEE、米国電気電子学会)の取り組みの一環としてリリースされました。802.11bは最大データレートが11Mbpsであり、単一の2.4GHz帯を使用していました。今日のデータレートは、複数の帯域(すなわち 2.4、5、6 GHz)をサポートし、最大9607Mbpsに達します。Wi-Fiは、高速ブロードバンドが家庭に普及すると急速に広まり、その後も普及を続け、一般家庭に浸透する存在となりました。「Wi-Fi」は2005年に辞書のMerriam-Webster English Dictionaryにも掲載されました。
Wi-Fiの進化
| IEEEプロトコル | 802.11 b | 802.11a | 802.11g | 802.11n | 802.11ac | 802.11ax |
| WFAの命名 | 該当なし | 該当なし | 該当なし | Wi-Fi (認定) 4 | Wi-Fi (認定) 5 | Wi-Fi(認定)6、Wi-Fi 6E |
| 導入年 | 1999 | 1999 | 2003 | 2009 | 2013 | 2019、2021 doe 6E |
| 帯域 (GHz) | 2.4 | 5 | 2.4 | 2.4、5(SBまたはDB) | 5 | 2.4、5、6(SB、DB、TB) |
| チャネル帯域幅 (MHz) | 20 | 20 | 20 | 20、40 | 20、40、80、160 | 20、40、80、160 |
| 許容ストリーム数 | 1 | 1 | 1 | 4 | 8(4のみ実装) | 8 |
| 最大データレート (Mbps) | 11 | 54 | 54 | 600(150 Mbps/ストリーム) | 433(80 MHz、1 SS)866(160 MHz、1 SS)3467(160 MHz、4 SS) | 143(20 MHz、1 SS)600(80 MHz、1 SS)9607(160 MHz、8 SS) |
| MIMO | 該当なし | 該当なし | 該当なし | シングルユーザ (SU-MIMO) | ダウンリンクマルチユーザ (DL MU-MIMO) | マルチユーザ (DL MU-MIMO) |
| サブキャリア間隔 (KHz) | 該当なし | 312.5 | 312.5 | 312.5 | 312.5 | 78.125 |
| シンボル期間 (us) | 該当なし | 3.2 | 3.2 | 3.2 | 3.2 | 12.8 |
| ガード間隔 (us) | 該当なし | 0.8 | 0.8 | 0.4、0.8 | 0.4、0.8 | 0.8、1.6、3.2 |
| PHY変調 | DSSS | OFDM | DSSS、OFDM | DSS、OFDM、HT-OFDM | DSS、OFDM、HT-OFDM、VHT-OFDM | DSS、OFDM、HT-OFDM、VHT-OFDM、OFDMA |
| マルチユーザ動作 | なし | なし | なし | なし | Yes (DL MU-MIMO) | アップリンクおよびダウンリンクOFDMAアップリンクおよびダウンリンクMU MIMO |
| 最高次変調 | CCK | 64-QAM | 64-QAM | 256-QAM | 256-QAM | 1024-QAM |
| 省電力メカニズム | PS-POLL | PS-POLL | PS-POLL | PS-POLL | PS-POLL | ターゲットウェイクタイム |
| 空間再利用メカニズム | なし | なし | なし | なし | なし | BSSカラーリング |
今日、Wi-Fi AllianceはWi-Fiの用途と可用性の拡大を支援しています。新しいリリースごとに、新たな課題があります。例えば今日では、ほとんどのスマートフォンユーザは外出先でも高解像度ビデオにアクセスできます。これは、広帯域アプリケーション分野の多くの例のひとつです。帯域幅とは、インターネット接続を介して、測定された時間内に送信されるデータの最大量を指します。大量のデータを送信しているため、高帯域幅技術はネットワークに多大な負担をかけ、都市のような高密度な地域では、多くのデバイスが限られたネットワークリソースを奪い合っています。これが唯一の課題ではありません。今日、Wi-Fi上で膨大な数のデバイスが接続されるため、ネットワークのレイテンシーが増大し、スループットが低下し、消費者の接続性の問題やネットワーク速度の低下を引き起こしています。
アクセスポイントとは、Wi-Fiデバイスが有線ネットワークに接続できるよう WLANを構築するデバイスを指します。これに加えて、速度と電池寿命に対する消費者の期待はますます高まっています。IEEEとWi-Fi Allianceは、最新バージョンのリリースでは、個々のデバイスレベルでWi-Fiを改善するのではなく、ネットワークレベルとアクセスポイントの改善に焦点を当てています。
さまざまなプロバイダが提供するスマートホーム IoTデバイスの爆発的な増加に伴い、CSAアライアンスは、断片化を削減し、相互運用性とエンドユーザ体験を向上させるために、初のイテレーションとなるMatter 1.0をリリースしました。スマートホームにおけるWi-Fiの広範な普及により、MatterデバイスをWi-Fiネットワークにブリッジすることは、デバイスメーカーと消費者が新しい技術を統合する上で重要になります。
IoTデバイス向けWi-Fi 6の事例
今日、一部の開発者はすでにWi-Fi 6認証を取得しているため、ほとんどのデバイスは2025年または2026年までにWi-Fi 6に対応するようになります。これは、IoTやその他の進化する技術に対する市場の需要に応じて、普及することが期待されています。ウェアラブルやスマートスピーカー以外にも、ドアベル、サーモスタット、アラーム、コーヒーメーカー、電球、その他多くの家庭用品が接続されつつあります。特定のアクセスポイントと通信しようとするデバイスの数は今後も増え続け、パフォーマンスに対する高い期待も維持されるでしょう。住宅所有者は、スマートホームセキュリティシステムに導入されているようなセンサーが、電源に直接つながらなくても、長期間、場合によっては何年も動作することを期待しています。消費者は「一度設定したら放っておける」ようにした上で、それでも安心していたいと思っています。
ネットワーク効率の改善と帯域幅の拡大は、Wi-Fi 6がこの課題に対処するための手段の一つであり、消費者の信頼を高めることで、接続デバイスの普及を促進する可能性もあります。もう1つの重要度の高いアプリケーションであるスマートロックについて考えてみましょう。Wi-Fiスマートロックは、自宅へのリモートアクセスを求める人にとって信頼性が高く便利な選択肢ですが、他のバッテリー駆動デバイスと同様に、電力は電池がもつ間だけしか持続しません。時間内に交換されなければ、住民は自宅から締め出される可能性があります。ネットワーク効率の向上と帯域幅の増加によりスループットが向上すれば、接続の確立および維持に必要な電池の消費電力が削減されます。
Wi-Fi 6リリースの一環として、Wi-Fi Allianceは既存の問題点を評価しました。現在および新しいアプリケーションを検討し、特定のデータレートにおいてデバイスごとのスループット向上を支援することを目的に、さまざまな環境を評価しました。
Wi-Fi 6の機能強化
Wi-Fi Allianceは、Wi-Fi 6の設計を導くために以下の付加価値を定義しました。より優れたパフォーマンス、より長い電池寿命、屋外/長距離、高密度環境のサポート、一貫した後方互換性。
パフォーマンスの改善
Wi-Fiアライアンスは、Wi-Fi 6が単一クライアントデバイスのピークデータレートを40%向上させ、ネットワーク効率を4倍に向上させる未来を見据えています。
Wi-Fi 6は、非効率性を克服し、スループットを向上させるためにいくつかの調整を行います。フルデュプレックスOFDMAおよびマルチユーザ多入力多出力 (MIMO) により、アクセスポイントは複数のデバイスと同時に通信できます。Wi-Fi 4では、アクセスポイントは異なるデバイスと一度に一対一で通信していました。Wi-Fi 6では新たに、複数のクライアントデバイスが同時にデータをアクセスポイントに送信でき、より多くの情報交換の機会が開かれます。MU-MIMOでは、アクセスポイントは複数のアンテナから情報を受信し、単一の効率的なパケットにまとめます。これを実現するために、パケットは小さなパケットに細分化され、異なるデバイス向けのデータが単一の送信に含まれます。また注目すべき点として、ビームフォーミング機能により、アクセスポイントとクライアントは特定のデバイスを狙って送信できるようになり、通信範囲の拡大やスループットおよび効率の向上が実現されます。
より長い電池寿命
低消費電力アプリケーションのTarget Wake Times (TWT) により、クライアントはアクセスポイントと、どのくらいの時間スリープ状態を維持できるかを交渉することが可能になります。これにより、クライアントはデータパケットをいつプルするかを決定するために、ビーコンを常に探す必要がなくなります。Wi-Fi 6の主な利点は、特定のクライアントデバイスの固有のニーズを反映したスケジュールを設定する能力です。各クライアントがアクセスポイントと直接通信することで独自のスケジュールを設定できると、ネットワーク効率が向上し、クライアントデバイスがより長くスリープし、ネットワークをより有効に活用できるようになります。
高密度エリアでは、ネットワークの輻輳によりレイテンシーが生じ、スループットが低下します。これらの悪影響は、ネットワークに接続しようとする過程や低速なスループットの処理により多くの電力を無駄に消費してしまうため、特にバッテリー駆動デバイスに大きく現れます。クライアントが長時間スリープできると、平均消費電力が減少し、電池寿命が大幅に向上します。さらにWi-Fi 6のネットワーク効率とデータレートの向上に加え、クライアントが長時間スリープできるようになることで、平均消費電力が低下し、電池寿命が大幅に延びます。
屋内と屋外における拡張された通信範囲
拡張範囲のパケット構造と長いガード間隔を採用することで、通信範囲とカバレッジが向上します。特にドアベルやビデオカメラなど、アクセスポイントから離れているために接続が失われることがある屋内/屋外アプリケーションに有効です。
高密度環境のサポート
Wi-Fi 6は、高密度または混雑した環境でユーザ1人あたりの平均スループットを少なくとも4倍向上させるように設計されています。平均スループットを改善する主な技術には、アップリンクおよびダウンリンク直交分割多重アクセス (OFDMA) および空間再利用プロトコルの2つがあります。OFDMAを使用すると、アクセスポイントは一度に1人のユーザにチャネル全体を割り当てるか、もしくは複数のユーザに同時にサービスを提供するようチャネルを分割することができます。Wi-Fiの歴史上初めて、異なるトラフィックプロファイル(つまり、アプリケーション)を持つ複数のユーザが、同じチャネルを介して、ダウンリンクまたはアップリンクで同時に通信できるようになりました。OFDMAは、周波数再利用の向上、レイテンシーの低減、効率の向上を実現するため、医療用および産業用ウェアラブルなどの低帯域幅アプリケーションに最適です。
空間再利用プロトコルは、複数のデバイス伝送間の衝突を低減するように設計されており、これによりスループットが向上します。これは、重複基本サービスセット (OBSS) からの送信を無視して同時送信に対応することで実現されます。
後方互換性
IEEEは、意図的に各Wi-Fi世代を後方互換性を持つように開発し、レガシークライアントとアクセスポイントを使用し、既存のインフラストラクチャを維持できるようにします。これがWi-Fiがこれほど広く普及している理由の一つであり、人々は接続性を心配することなく、必要に応じてデバイスをアップグレードできます。Wi-Fi 6はWi-Fi 4デバイスとその間のあらゆるデバイスで動作するように設計されています。Wi-Fi 6デバイスは、ユースケースによってはアクセスポイントから特別な対応を受けることがありますが、これらのアップデートは互換性を考慮して設計されています。多くの家庭では、電話からスマートスピーカーまで、現時点で少なくとも20台のIoTデバイスを利用しており、その数は増加すると予想されます。Wi-Fi4アクセスポイントは引き続き機能していますが、メモリなどの実用的な制限のため、多数のデバイスをサポートできません。Wi-Fi 6では、OFDMA、MU-MIMO、BSS Coloringなどの機能により、家庭用アクセスポイントは、より多くのIoTデバイスをより適切に管理できるようになります。Wi-Fi 6は後方互換性があるため、アクセスポイントはWi-Fi 6クライアント向けのOFDMAと、Wi-Fi 4クライアント向けのOFDMの両方をサポートできるように規定されています。
IoT + SiWx917向けWi-Fi 6
Wi-Fi 6には、IoTアプリケーションに特に役立ついくつかの機能があります。
- 個別およびブロードキャストTWTにより、デバイスは特定のスリープスケジュールで動作し、より長くスリープできます。スケジュールはアクセスポイントと交渉され、スリープ状態のデバイスによって生じる相互運用性の問題が軽減されます。この機能は、高密度エリアでの消費電力を 20%削減します。これは、資産トラッカー、HVAC、サーモスタット、カメラ、動力工具、ウェアラブル、医療機器、スイッチ、センサー、ロック、シェード、ブラインドを含むすべてのバッテリー駆動デバイスにとって非常に重要です。
- アクセスポイントごとにサポートされるエンドデバイス数が、Wi-Fi 4では20であるのに対し、約50+であるため、全体としてより高密度のIoTデバイスをサポートできることになります。フルデュプレックスのマルチユーザ、複数入力、複数出力 (DL/UL MU-MIMO) により、デバイスごとの通信が大幅に高速化されます。さらに、Wi-Fi 6 MU-MIMOにより、ルーターが同時に接続できるデバイス数は、以前のバージョンの4台から8台に増えます。
- アップリンクおよびダウンリンクOFDMA、空間周波数再利用、UL MU-MIMO、およびビームフォーミングにより、スループットの改善、効率性の向上、レイテンシーの低減が実現し、パフォーマンスとエネルギー効率が向上します。異なるユーザに帯域幅を割り当て、OFDMAベースのスケジューリングを活用することで、オーバーヘッドが削減され、全体的な効率が向上し、スループットが増加します。
- 長いガード間隔、サイクリックプレフィックス、干渉の低減、および広範囲のパケット構造により、屋内および屋外のカバレッジエリアの向上に役立ちます。さらに、BSSカラーコードを使用して別のネットワークからの伝送を識別することで、同一チャネル干渉の緩和が可能です。これらの機能は、IoTデバイスにとって、通信距離の向上、接続の堅牢性の強化、そして導入ごとのカバレッジ改善に貢献します。
- Wi-Fi 4 2.4GHzとの後方互換性により、将来のアップグレードがシームレスなものになります。
- MatterのMatter over Wi-Fiのサポートは、Wi-Fiのセキュリティおよび性能機能を活用し、プロビジョニングにはBluetooth LEを使用します。
Silicon Labsでは、これらの利点を、超低消費電力かつ高性能なWi-Fi 6およびBluetooth Low Energy (LE) 5.1 SoCによるIoTソリューションSiWx917で活用してきました。
電力、コスト、およびIoT最適化を考慮して、開発者がWi-Fi 6の利点を最も幅広いデバイス(バッテリー駆動、低消費電力など)で活用できるよう、2.4GHz帯域に注力しました。さらに、20MHz帯域幅は、IoTデバイス(ドアベルやスマートカメラなど)のストリーミングに対応するための強力な最大データレート (86 Mbps) を維持しつつ、電力効率の観点から最高のパフォーマンスを発揮します。
SiWx917およびWi-Fi 6の詳細をご参照ください。また、Wi-Fi 6が自社のアプリケーションにどのように適合するかについてのご相談は、当社までお問い合わせください。
